普段、横須賀で過ごしていると余りに自然な風景なので気にしたことがないのですが、先日、車で横須賀に遊びに来た友人に「トンネル多くない?」といわれて、そういえばそうだね、と気づかされたのです。
今回は、そういうわけで、横須賀のトンネルのおはなし。
横須賀のトンネルは、かく語りき
いわれてみれば納得、横須賀は海と山に囲まれた地形ゆえトンネルが多いのです。その数、およそ120本。鉄道用のトンネルも含めると、150本以上もあるそうです。
先日ブログでも触れましたが、明治の頃から軍港として発展してきた横須賀は、人の移動はもちろん、物資を輸送することで軍港を支えてきました。横須賀にあるトンネルはそんな横須賀の発展の変遷を色濃く映し出しています。
そして、造られた時代によって、使用されている素材や型が異なっているだけでなく、造られた背景が異なっているため、横須賀のトンネルは個性豊かなものが多い、ともいわれています。
横須賀のトンネルの分類
数ある横須賀のトンネルを分類すると、おおまかに4つに分けることができます。
1 明治前半の軍港整備
ブログ記事にも書いた、海軍施設である横須賀製鉄所(横須賀造船所)の建築が、幕末から明治前半にかけてフランス人技士ヴェルニーによって横須賀で進められました。軍港の整備にともなう資材運搬や人の移動などを円滑にするために、トンネルも造られました。
猿島、観音崎周辺にあるトンネルは、そのように、軍事的目的で造られたトンネルであり、古い時代のトンネルということになります。
観音崎公園内 28サンチ砲台へのトンネル
ちなみに、横須賀市内最古のトンネルは、観音崎の海岸線遊歩道にある素掘りのトンネルです。黒船来襲に備え、観音崎の台場を移動させる際、兵員や弾薬を運ぶ通路として、1852年に造られたそうです。
2 生き残るための住民トンネル
横須賀の軍港が活発化し大きくなってゆくにしたがって、横須賀の人口も多くなり、住民も増えてゆきました。
リアス式海岸のように谷が入り組み、”行き止まりの谷”のことを指す谷戸地区は、横須賀には79もあります。
軍港関係者の住居は、そのような谷戸地区にも建てられ、なかでも横須賀北部にある谷戸地区は、交通が不便な土地でした。軍港開発のために海岸が上陸禁止となり、生活交通であった渡船による交通ができなくなりました。
また、外の往来には必ず山を越えなければならない土地もありました。それらの地域に住みはじめた住民たちは自分たちの生活の利便のため、生き残りのために、自ら一致団結し、谷戸の奥とそれぞれの生活拠点を結ぶためのトンネルを切り開いたのです。
今ではその多くが整備され、改修されていますが、車では通り抜けられない程の狭く小さな谷戸地区のトンネルは、当時と同様、住民の生活に密着し、大切に使われています。
浦郷町~堀越町の梅田隧道
追浜東町~浦郷町の深浦隧道など
梅田隧道
画像引用:横須賀市https://www.city.yokosuka.kanagawa.jp/2482/walk_taura/b10008.html
3 大正末から戦前の都市化インフラ整備
大正末から戦前にかけて、横須賀はますます都市化が進みました。このとき、横浜や逗子といった周辺地域と広域に結ぶことを目的として、トンネルの建設が進みました。
その多くは、車で通行することを考えて造られており、現在も横須賀の主要道路として利用されています。
国道16号 船越隧道
船越町 日向隧道 など。
4 戦後から現在に至る安全で快適な都市整備
戦後、人々の生活を安全で快適にするためにも、トンネルが造られています。土砂崩れなどの災害時に、道路が塞がれても谷戸の奥の人々が避難できるよう、町と町を結ぶ防災トンネル。山道を越えなければ行けなかった小学校の通学路を便利で安全にするための歩行者専用トンネル。
東京と結ぶ首都圏の動脈でもある横浜横須賀道路にあるトンネルなど。生活が豊かになったことで整備されたトンネルは、まさに、都市生活のためのトンネルです。
浜見台第2隧道
画像引用:追浜観光協会https://oppama.info/?page_id=531
横須賀らしさ
冒頭で鉄道用のトンネルを含めると150は優に超えると書いた通り、鉄道用のトンネルも横須賀にはとても多く存在しています。特に京浜急行の追浜駅から横須賀中央駅にかけては、駅と駅の間の短い距離に長いトンネルがあり、外の景色が見られる時間の方が短いくらいです。
また、横須賀のトンネルには、当初水道用として造られたものを、道路用に転用して利用しているトンネルもあり、横須賀のトンネルの特徴でもある、といわれています。
走水隧道など
走水隧道
時代背景に加え、その土地の地形や条件を考慮して造られた横須賀のトンネルは、ひとつひとつにエピソードがあり、ただ単に通り過ぎるだけでなく、ゆっくりと思いを馳せ、鑑賞しながら通りたくなるほどです。
外部参考リンク:
横須賀市観光情報サイトーここはヨコスカーhttps://www.cocoyoko.net/