前回のブログ「ジーンズの生地・デニムについて」で、デニム生地の語源や、どうやって織られているか、また、最近の綿以外の素材について触れました。
今日は、さらにジーンズといえば!というデニム生地
セルビッチデニムについてのおはなしです。
セルビッチデニム
巷でずいぶん耳にするようになった、「セルビッチデニム」ということば。
かつては、オタクの域にいるジーンズ好きだけがつかう、専門用語だった気がします。
が、今や、モノもヒトも多様化の時代、情報社会です。
ジーンズ市場において、セルビッチデニムも、差別化を図るための重要な武器となり、頻繁に用いられるようになりました。
セルビッチデニムとは、大まかにいえば、昔ながらの旧式織機をつかって織られたデニム生地のことです。
生地の両端にある「耳」とよばれるほつれ止め部分、セルビッチ、が特徴です。
このセルビッチデニムの耳には、赤い糸がつかわれており、キレイに赤いラインがはいっています。
そこで、セルビッチデニムは、通称「赤耳」と呼ばれているのです。
最近では、「青耳」やさまざまなカラーの”耳もの”が出回るようになりました。
中には、レインボーカラーやハンドステッチ風なものまであるそうです。
いずれも、品質や生地の特性には変わりはないそうです。ちなみに、セルビッチ(selvege)とは 、1930年代オランダ語のselfeggheが語源で、英語のself-edge(自動的についた端)と同意。生地の端(耳)という意味です。
赤耳は高級品の証?
セルビッチデニムは、しばしば高級デニムの証といわれています。
なぜなら、それは、生産効率がわるいからです。
セルビッチデニムの生産効率が悪い理由
そのいち。
旧式の織機を使用するため、通常のデニム生地の5倍以上、織るのに時間がかかります。
計算され尽くし、改良に改良を重ねられた精密な最新織機とは異なり、旧式織機では、職人が何度も目で確認しながら織りすすめるために、時間がかかるのです。
そのに。
生地巾が旧式織機のために、短いのです。
通常の生地巾が150cmのダブル巾に対して、セルビッチデニムの生地巾は、80cm程度。
一本のジーンズをつくるのに必要な生地が、ダブル巾なら、1.2mから1.5mに対して、生地巾80cmだと、2.5mは必要なのです。
そして、生地巾が短いからといっても、1mあたりの単価は変わりません。
ということは、同じジーンズをつくるのに、倍以上の生地代がかかる、ということでもあります。
そのさん。
織りキズなども起こりやすく、無駄になる部分が多い。
時間がかかり、一度につくられる量も限られ、無駄もでやすい。
とても貴重なデニム生地だ、ということです。
高価なセルビッチデニムが、それでも人気を誇る理由は、その素材感にあります。
ひとつひとつ丁寧につくられた生地だからこそもつ風合いがそこにはあります。
職人の手が触れた、味わいがあるのです。
そして、その素材感には、古くから伝わるジーンズの重厚感・ホンモノ感が漂っています。
セルビッチデニム大国、ジャパン
グローバル化が一段と進み、セルビッチデニムもあらゆる繊維生産国でつくられるようになりました。
アメリカ、ヨーロッパはもちろん、中国やタイなどでも盛んにセルビッチデニムと称されるるものが生産されています。
そして、日本はそのなかでも、全世界が注目するセルビッチデニム生産国です。
高級ジーンズブランドなどが、こぞってmade in Japanのセルビッチデニムを使用しているのです。
なかでも、岡山県産のデニムは知る人ぞ知る最高級品です。
岡山のデニムについては、後日詳しく触れたいと思っています。
先にも述べた通り、旧式織機をつかって、職人が時間をかけて織るセルビッチデニムは、とても貴重な生地で、コストがかかります。
大手メーカーの中には、安価でセルビッチデニムジーンズを販売しているところもあります。
「本当に良いもので、安いものはない」とは、あるひとのセリフですが、手間暇かけてつくられているものが、安価で売られている、ということは、きっとどこかにその歪みが生じている、ということである、と思っています。
そして、その違いは、なにより自分の目と肌で触れて感じることで、わかることなのかもしれません。
(参考サイト:https://www.libertad-japan.com/selvage)
次回もひきつづき、ジーンズについてのおはなしを。