こだわる人のワンタックスリムジーンズ-part1-

ジーンズ

9月20日にMakuakeにて開始したクラウドファンディングプロジェクト、《つべこべ言わずに穿いてみな》横須賀発・ワンタックスリムジーンズ。おかげ様で多くの方にご支援いただき、4日目にしてなんと当初の目標金額を達成しました。ご支援いただきましたみなさまに、深く感謝いたします。そしてここからは、更なる高みを目指すのみ! 引き続き、プロジェクトへのご支援をどうぞよろしくお願いいたします。

さて、今回のテーマは、YOKOSUKA JEANSの大きな特徴でありこだわりでもある、タックについて。パンツの重要な”機能”であるタックの知識を深め、YOKOSUKA JEANSを掘り下げます。

タックをみれば時代がわかる

パンツのタックとは、パンツの前側ウエスト下部分にある生地を折りたたんで作ったひだのこと。正式にはプリーツといい、タック入りパンツのことを英語では、pleated trousersといいます。ひだがひとつだとワンタック(single pleated)、ふたつだとツータック(double pleated)、ノータック(flat front/non pleated)はひだ無しです。タックは腰下から太ももにかけての幅をもたせ、稼働域を増やし、動きやすくする機能です。そして、ファッション性を高める装飾としても施されてきました。

パンツのタック

YOKOSUKA JEANSはワンタックスリムフィットジーンズ

女性のスカート丈ほどではないにしろ、パンツのタックを見ればその時代の流行がわかると言われるほど、タックはパンツにとって重要な要素です。ここでメンズファッションの変遷を追いかけながら、その時代のパンツのトレンドをおさらいしたいと思います。

メンズファッションの変遷とタックパンツ

1920年イギリスのオックスフォード大学でゴルフが大流行。ゴルフウェアであるニッカーボッカーズ(knickerbockers)を穿いたまま授業に出る学生が続出し、大学はニッカーボッカーズでの授業出席を禁止しました。そこで学生たちがこれでもかと編みだしたのが、「オックスフォードバッグス(oxford bags)」。ニッカーボッカーズを穿いたままその上から重ねて穿けるワイドパンツです。ウエスト部分にたっぷりタックを入れ、ヒップ周りも十分に余裕があるまさにダボダボぶかぶかのパンツです。なにせ、パンツを重ね穿きできるくらいですから。その後数十年、男性のパンツはタック入りの太めのものが主流となりました。

オックスフォードバッグス

画像引用:https://hear-the-boat-sing.blogspot.com/

1920年代後半イングリッシュドレープスーツが誕生します。スリムでタイトなスタイルが主流だったメンズスーツに、ゆったりと柔らかなひだやしわを作ることで男の余裕であり大きさを強調させました。パンツもたっぷり太めです。

イングリッシュドレープスーツ

画像引用:https://www.bloglovin.com/

1940年代それまでの流れがアメリカで大流行したスーツスタイル、ボールドルックに続きます。幅広のショルダーラインにウエストラインは絞り込み、パンツは太めのストレート。そしてタックは多いものでなんと4つ!シカゴマフィアの伝説のボス、悪名高きAl Capone(アル・カポネ)が愛用したこのスタイルは、大胆不敵で力強い男性像の象徴でした。

ボールドルック画像引用:http://www.return2style.de/

同時に黄金期にあったハリウッドの映画界でもゆったりパンツが主流に。1930年から1950年にかけて活躍したダンスの神様、Fred Astaire(フレッド・アステア)はいつもタック入りのパンツを穿いていました。Mr.ダンディーこと、Humphrey Bogart(ハンフリー・ボガード)、正統派2枚目スター、Gregory Peck(グレゴリー・ペック)やCary Grant(ケーリー・グラント)などなど、銀幕の大スターがさらりとかっこよく着こなしていたのは、ウエストがきゅっと絞られ、タックが入り、腰回りがゆったりとした太いパンツです。

1950年代全体的にスリムなシルエットのミスターTルックが流行します。ミスターTとは、Thin(痩せた)・Tall(背が高い)・Trim(こぎれいな)の頭文字”T”をとったもの。スマートで社会的、エリート意識のある男性を表現しているミスターTルック。もちろんパンツはスリムでタック無し。そして、このスタイルは後のアイビールックに影響を与えます。一方、ジーンズや革ジャンなどロックなアメリカンスタイルが浸透したのもこの時代。ジーンズが労働者の作業着からファッションアイテムになった時代であり、以後、カジュアルパンツルックの代表格として今日まで君臨するわけです。そしてご存知の通り、ジーンズはノータックのストレートです。

1950年代ミスターTルック

画像引用:https://42ndblackwatch3881.wordpress.com/

1960年代ストリートファッションから流行が発信されはじめた時代。アイビールックヒッピーモッズなど。多様なスタイルが登場します。パンツはヒッピーカルチャーの象徴でもあるベルボトムをのぞけば、基本的に細めのノータック。

1960年代アイビールック

画像引用: https://www.gentlemansgazette.com/

1970年代ヒッピーカルチャーを引きずりつつ、個性的なファッションが流行りました。なかでも1970年代の代表的なファッションといえばディスコファッションです。映画『サタデーナイトフィーバー』のJohn Travolta(ジョン・トラボルタ)に誰もが憧れ、真似をしました。

1970年代ディスコファッション

画像引用:https://vintagedancer.com/

また、イギリスを中心にグラムロックが流行ったのもこの時代。David Bowie(デビット・ボウイ)やQueenのFreddie Mercury(フレディー・マーキュリー)のように、ビビッドカラーに身を包む、それまでの概念に囚われない、ある意味過激なファッションも流行りました。音楽やダンスに密接に関係するこの頃のファッションには、躍動する身体の動きやセクシーさをより強くアピールするスタイルです。故にパンツは全体的に太め。タックは入らず、ウエストからヒップにかけてのラインはピタッとタイトに身体に密着し、腰まわりのラインを強調しています。逆に太ももから裾にかけてはストンと太く柔らかな動きのある形でした。

1980年代日本ではDCブランドが空前の大ブームに。モードという言葉を日常的に使いはじめたのもこの時代。ヨウジヤマモトやコムデ・ギャルソンの川久保玲など、今や世界を代表する日本人デザイナーが活躍し始めた時代です。モノトーン、ソフトシルエット、ソフトスーツなど、身体の線を隠し大きく見せるビックシルエットが流行りました。パンツはタック入りがトレンドに。そして、それまでオーダーメイドが主流だったスーツも、デザイナーがデザインした既製スーツが流通しはじめました。横須賀の若者たちがワンタックジーンズを穿いていたのもこの頃です。ジーンズにもタックが入るほど、タックパンツが大流行したのです。

1980年代日本男性ファッション

画像引用:https://middle-edge.jp/articles/I0000405

1990年代バブル経済の象徴として今も語り継がれるアルマーニなどのイタリアンスーツが流行りました。派手なシャツに肩パットがはいったオーバーサイズのスーツ。トレンディードラマの主人公たちが”カッコつけて”着こなしていました。パンツは引き続き太くルーズなスタイル。もちろんタック入り。

1990年代バブルファッション

画像引用:http://www.lordhouse.jp/

サブカルチャー、ストリートカルチャーがファッションに大きく影響を及ぼしたのもこの時代。ヒップホップギャングスターダンスブームなど、マイノリティやストリートから生まれた文化がメインストリームとなりました。ラッパーやダンサーではない、多くの若者も太いバギーパンツをルーズに穿いていました。そうそう、高校生の制服のパンツが太くだらしなかったのを覚えています。また、ヴィンテージジーンズがブームとなり、古着屋で驚愕価格のジーンズが飛ぶ鳥を落とす勢いで売れた時代でもあります。ファッション雑誌もわんさか出版され、その影響も絶大でした。

2000年以降それまでに比べると、ファッションはきれいめにシフトしていきます。パンツは一転、細めのノータックに。2000年にディオールがスキニージーンズを発表したのを皮切りに、ジーンズもスリムやスキニーと細いシルエットラインが一世を風靡します。パンツはどこまでも細くなり、それまでタック入りが当たり前だったスーツのパンツに、ノータックが定番として加わりました。逆にこの頃のタックパンツは、時代遅れの象徴でした。

2016年以降再び太めのワイドパンツがトレンドに返り咲きます。スキニーパンツやスリムフィットが定番となったのもつかの間、”テーパード”という言葉が頻繁に聞こえてくるようになり、あれよあれよと太めで裾にかけて細くなる動きやすいパンツが昨今の流行りです。腰回りはゆったりと、細すぎず、かといってバギーバンツほど太すぎずない先細りのテーパード。タックパンツも増えてきて、腰回りがダボッとしていた1980年頃に流行ったタックパンツとは違い、きれいで品のあるシルエットのタックパンツが人気のようです。

多様化が年々進み、ファッションがかつてのように一言では括れなくなって久しいですが、タックに着目してみると流行りの変遷がより明確に見えてくるのがおもしろい限りです。

実を申せば、昨今の流行りとは全く違う水脈から湧いているワンタックスリムフィットジーンズのYOKOSUKA JEANS。もしかしたら今この時に生まれたことは偶然的必然だったのかもしれませんね。

まだまだあります、タックのはなし。次回はスーツのパンツに機能として施されたタックに焦点を当てつつ、少々マニアックな方向にはなしを進めたいと思います。

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