岡山県倉敷市児島。
世界の児島といわれる、ジーンズの聖地・児島にフォーカスする記事の第2弾。
今回は、児島のジーンズがなぜ世界中のハイブランドから信頼される程になったのか、児島で作られるジーンズの製造工程を追いかけながら、その品質の秘密をひも解いてみたいと思います。
児島のジーンズ製造工程
染色|児島のジーンズ製造工程その1
殺菌、消臭、防虫、耐火性という高い機能性から、藍染めの技術が古くから根付いていた日本。天然植物を使用し、何度も染めを繰り返すことで色の深さを出していく藍染めの技術は、色彩感覚を要する技術です。数十色にもなる色の違いを見極め調整する藍染めの文化は、児島でのデニム生地に使用する糸の染色にも大いに活用されることとなります。
また、太い繊維にキチンと色を入れる技術があるため、厚みがあり、深みのある色落ちが期待できるデニム生地を生産することが可能になります。
ジーンズを研究し作り続けてきた経験と技術から、どんな色落ちをさせたいか、糸の染色の段階から計算し、コントロールしているのです。
織り|児島のジーンズ製造工程その2
明治時代に大型の近代紡績工場が次々と開業したことで、児島は繊維の街として発展しました。時代の変化やグローバル化とともに紡績工場がなくなり、機屋が減少した今現在でも、児島には国内のみならず世界基準の技術を有する織り職人や会社が顕在しています。
旧型の機械を使い、糸を張る強さ(テンション)に強弱をつけることでデニムの表面に凹凸をつけ、ジーンズらしい独特な色落ちがあらわれるよう織られてゆきます。ここにもまた、ジーンズを作り続けてきたからこその技術と経験が活かされています。
パターン・裁断|児島のジーンズ製造工程その3
パターンとは洋服を作る時の型紙、いわば設計図です。ジーンズのことを知り尽くした児島のパタンナーは、同時に人それぞれ違う体型の特徴も知り尽くし、異なる体型に見合った美しいシルエットのあり方を追求する職人です。
学生服の国内シェアが一時は9割を占めていたという児島には、洋裁技術の粋もしっかり根付いており、ジーンズ作りにも、それは余すところなく注ぎ込まれているのです。
縫製|児島のジーンズ製造工程その4
ジーンズは、生地の厚さ、パーツの多さ、ブランドごとに異なるステッチなど、高い縫製技術を要する製品であり、縫製の技術力が目で見てわかってしまう製品でもあります。特に、ジーンズの「小股」と「後ろポケット」の縫製をみれば、そのジーンズの善し悪しが分かる、といわれています。技術力だけでなく、職人のセンスも問われる重要部分でもあるからです。
また、児島には名機といわれるミシンがあちこちで存在し、それらは高度な技術のある職人でしか使いこなせないそうです。
時を経て受け継がれる縫製の機械と技術、ハードとソフトが両立しているからこそ生み出されるのが、児島の品質なのです。
加工|児島のジーンズ製造工程その5
国産ジーンズの発祥の地・児島は、ジーンズを洗って柔らかくしてから売る、という今では常識となった加工を、世界で最初にはじめた土地でもあります。それ以来、児島のジーンズ加工職人たちは、日々変化するジーンズのトレンドとともに、その加工技術を磨いてきました。
洗い、擦り、破き、装飾など、ジーンズ特有の加工技術。児島の加工職人たちは、人の手が加わったことさえも感じさせない自然で鮮やかな表情を生み出すことを誇りにしています。
日本人ならではの細部にわたるこだわりと追求心、手仕事の器用さ、そこに児島の脈々と伝わるジーンズと対話してきた時間と知識。ジーンズの加工を誰よりも早く始め、プロとして生業としてきた児島の加工技術が世界中の人々を魅了しているのは、至極当然のことなのかもしれません。
今回、児島のジーンズ品質の”ウラ”を調べるにあたり、児島のジーンズ製造関連企業等のサイトを拝見して気がついたことは、その工程へのこだわりと想いがいずれも深く熱いこと。それぞれが誇りを持ってジーンズと関わっていること。そして、バトンを渡すように一本のジーンズを連携して仕上げていることが見てとれたことでした。
今では、ジーンズ製造を紡績から加工まで自社で一貫して行っている国内企業は一つか二つに限られているそうです。児島では、街全体でジーンズを製造する工程が一貫していることで、技術力と品質が維持され、また、日々磨かれ追求されているのです。