ユニクロが、あらゆる世代をターゲットにダウンジャケットを手頃な価格でうちだしはじめたのが、20世紀末。21世紀にはいると、H&MやZARAなど、海外のファストファッションブランドが、日本国内での店舗数を急激に増やし、安価で、流行をとらえたファッションアイテムを気軽に買うことができるようになりました。
今回は、洋服を気軽に買えるようになった今だからこそもういちど考えたい、ファッションの消費について、ファッション情報がわたしたちに及ぼす影響について、そして、技術革新によってえられる新たなサービスから、今後に期待する既製服のあり方、のおはなし。
流行と大量生産
映画「プラダを着た悪魔」は、現代のシンデレラストーリーとして有名ですが、ファッションに興味はあるけれど、マニアではないし、雑誌を何冊も読みあさって寝ても覚めてもファッション、というほどではない、手の届く流行を楽しんでいる、ごくごく一般的な人々に、とても魅力的に、そしてわかりやすくファッションのことを教えてくれるとてもいい教材であり、資料です。
本来のファッションの意味や、ファッションが人々にもたらすものとはなにか。そして興味深いのは、一流のハイファッションが作りあげた流行、たとえば、生地やデザイン、流行色が、ファストファッションや一般的な人々の消費社会にどのように影響し、そして消費されるにいたるか、流行ファッションのはじまりから行きつく果てまでを主人公の成長物語のなかで上手に教えてくれます。
大量生産されたものを、大量消費する、消費社会。当たり前のようにシーズンごとにアイテムを買い替える。乗り遅れまいと、競い合うように流行を追いかける。それは、いかにファッション業界やメディアが人々を魅了し、さらなる消費活動を煽り、そして洗脳しているか、ということでもあります。
それは、パンツやシャツ、靴や鞄といった商品に限らず、ライフスタイルや人々の価値観に関わるものごとにも、あてはまり、体型も、そのひとつといえます。理想の体型、ファッショナブルな体型、デザイナーがデザインする服がおもう通りに映える体型。そんな体型をしたファッションモデルたちが、最新のファッションを身にまとい、プレゼンテーションすることで、人々は魅了され、あこがれ、所有したい、こんなふうになりたい、という欲求にかられるのです。
オーダーメイド文化がまたやってくる?
前々回のブログで触れた、「ZOZO」による「体型採寸ボディスーツ」を利用することで提供されるオーダーメイドサービスは、実データに基づいて選んだ何千というパターン(型紙)をつかい、注文に応じて微調整を施して商品を仕立て、提供するサービスです。かつてあった仕立て服の概念をとりいれた、これからの既製服文化への新たな提案ともいえます。資本主義社会ゆえのビジネスとしての展望、利益を生む構造がなければ成立しない難しさこそあれ、技術革新があるからこそ得られるサービスであり、いままで売り手にゆだねられていた服のサイズ展開が買い手に大きく歩み寄る、新しい試みです。
もし今後、流行をとらえた多様なデザイン、多様なアイテムがこの方法で提供されるようになれば、体型を流行にあわせるのではなく、流行が体型にあわせる時代がくるかもしれません。また、実際のところ、近頃、オーダーメイドによるスーツや靴、鞄などの革製品はもちろん、ジーンズなどを提供するメーカーやブランドを目にする機会が、以前に比べて増えてきているようにおもいます。
多様化した社会のなかで、提供される製品やサービスも、多様化し、消費者としての選択肢が増えています。(あまりにも選択肢が多くて、困るほどです)
売られているものしか買えないファッションを自分の体型でどう着こなすのか、という人々の悩みは、ファッションを生みだし、提案し、提供する側がどのように人々の体型を考え、取り組むのか、という方法次第で、多少なりとも解決される問題なのかもしれません。
体型とファッションについて、前回に引きつづき考えてみました。
あともうひとつだけ、考えてみたいことがあります。それは、人々の体型に関する価値観について。自分の体型やほかの人の体型をどう思っているのか。ファッションを考えるとき、人は、往々にして自分と人の体型を比べることが多い気がするのです。日本と海外の例を比べながら、体型とその価値観について思いをめぐらせてみたいとおもっています。でもそれは、いつかまたの機会に。
外部参考リンク: