横須賀ジーンズ商会のはじまりは、以前のブログ「欲しい」と「穿ける」のあいだでに記した通り、今年御年52歳になるある男の、「今の自分の体型で、お洒落したっていいじゃないか!」という熱く、切実な思いがきっかけでした。昨年末から巷では、「体型採寸ボディスーツ」が人々の関心をよんでいます。
今回から数回にわたり、そんな旬の話題に触れ、その人の価値観や生き方にも関わる、体型とファッションのおはなしをお届けします。
時代とZOZOSUIT
昨年11月に発表されてから予約殺到、今年4月には改良版が発表され、未だに予約者が後を絶たず、手にできるのは半年以上先という、一般市民のみならず、アパレル業界も震撼させた、スタートトゥデイ社のブランド「ZOZO」による「ZOZOSUIT(ゾゾスーツ)」。IT時代だからこそ生まれたこの「ZOZOSUIT」は、身にまとい、スマートフォンで全身360度撮影し、専用アプリで確認することで、全身360度の体型が3Dスキャンされ、全身のサイズが瞬時に計測できるという、「体型採寸ボディスーツ」です。(参考外部リンク:https://zozo.jp/zozosuit/)
消費者にとっては、服選びに必要なからだの部分ごとのサイズが把握できるため、服のサイズ選びに悩むことがなくなります。そして、この採寸データをもとに「ZOZO」が販売する、まさに”あなたのからだにピッタリ”のオーダーメイド服を購入できるようになります。現在この「ZOZO」が販売しているアイテムは、Tシャツと、そしてなんと、ジーンズです!
開発したスタートトゥデイ社によると、この「体型採寸ボディスーツ」開発の真の目的は、”ファッションの数値化”にあります。アパレル業界では喉から手が出るほど欲しいデータといわれている、消費者の体型データをこれまで蓄積されたビッグデータと解析すると、商品開発はもちろんコーディネート提案やあらゆるマーケティング分析が可能になるのです。さらに、ヘルスケア研究に役立てられる重要なデータにもなりえるのです。
日本国内のみならず、世界各国に向けて提供されている、この「ZOZOSUIT」は、ファッションにとどまらず、あらゆる分野で人々の役に立つ可能性を秘めています。
文明の利器がもたらすものとは?
さて、この「体型採寸ボディスーツ」の話題が広まったことで、いくつか気になることがあります。ひとつは、一般市民が、どうやってこの画期的な時代の賜物を利用するのか。そして、ファッション・アパレル業界に、どういう変化をもたらしてくれるのか。さいごに、人々のファッションに対する価値観、転じて、自分や人の体型に対する意識に、どう作用するか。
自分の体型をどれだけわかってる?
まず、SNSやYouTubeなどで、このボディスーツをいち早く体験している人々の反応や感想をのぞいてみると、
「着てみた!」「スゴい!」「便利!」「記録に残るのがうれしい」「計測は簡単ではない」
など、やはりその画期的な商品の性能と採寸結果に、驚き、喜んでいるといった様子です。計測にコツがいるようで、ネット上には計測のコツに関するサイトもみうけられました。そして想像通り、「自分を見つめ直した」「数字でみるとリアル」とつぶやきながら、ダイエット宣言をしている人々も目立ちました。そうなんです、この自分の体型の見直しこそ、この新製品の爆発的な人々の関心の源であり、当然といえば当然の反応だとおもったのです。
これは既に新しい常識になりつつあるのかもしれませんが、ダイエットをする際に気にするべきなのは、体重ではなく、鏡に映った自分の体型いわゆるボディラインであり、理想のボディラインを基準に、ダイエット法を検討すべき、ともいわれています。昨今の筋肉質体型の流行りもその一環といえるのではないでしょうか。
男性にとっては、30代中盤にやってくるメタボリズムとの戦いがあります。
「大好きなジーンズ。最近ウエストがきつくて穿けない」
「パンツのゴムにおなかがぽっこりのっている」
仕事も忙しく、運動時間も限られているうえ、つきあいでいく外食も多い。代謝も衰える一方。体型は、どっぷりと丸みをおびるばかり。
おもしろいデータを見つけたので紹介します。戦後から2010年までの、30歳代の男性女性、それぞれの平均身長・平均体重の推移です。身長については、男女ともに一貫して伸びており、それぞれ10cm程度、率にすると6%から7%です。ところが体重については、いずれも増加傾向ながら、男女の傾向に差があり、女性は体重増加率が1970年代以降はほぼ横ばいなのに対して、男性は身長の伸び率7%に対して、体重は25.9%。なんと、身長の3倍以上の増加率です。そう、男性の肥満傾向が強くなっているのです。
ダイエットをしている。毎日ジムに通ってる。または、体型を維持するために常に努力している。という人以外の、ごく普通の日々を過ごす人は、毎日服を着替えたり、新しい服を購入するときに、ようやく自分の体型のことを見直したり、体型の変化に気づいたりするものです。そういう意味では、この「体型採寸ボディスーツ」を定期的に着用することによって、見た目だけでなく、客観的な数値にし、体型を客観的に把握できるようになります。
体脂肪計が一般的に普及したいま、つぎは、この「体型採寸ボディスーツ」が一人一着という時代になり、人々の健康管理や体型管理に役立てらる時がくるのも、そう遠くないのかもしれません。
データ引用;https://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/2182.html
ファッションと体型、理想と現実
衣服が、人間の身にまとうものである以上、着る人の体型を考えずには語れません。流行りの衣服を身にまとうための体型となると、ファッション雑誌でみられるモデル体型が想起され、モデルのようなかっこ良い体型になりたい、きれいな体型になりたい、と理想の体型をおもい描き、そのために努力するのはとても自然な衝動であり、欲求です。
そして、雑誌の中のモデルが着る衣服は、どれもその時の流行りを基準にデザインされ、サイズも往々にして標準的なサイズで、なおかつ、デザイナーが望むスタイルを維持する範囲で展開されているものです。消費者は、その限られたサイズとデザインのなかで、欲しいもの、自分のサイズにあうものを、取捨選択しているにすぎないのです。
「ファッションは忍耐である」とは、よくいわれていることです。欲しいと思うファッションを身にまとうためなら、自己犠牲も惜しまず、体型管理に励むべし、ということでしょう。そしてファッションがファッションでなり得るのは、そうした自己鍛錬をし、美意識を洗練し、磨き続けることで、築かれる世界があるからでしょう。しかし、現実は、世の中全ての人がファッションモデルのようになれるわけでもなく、人によっては、なりたいわけでもないのです。それでも、やっぱり流行りの服は着たい、と誰もがおもうものなのです。それゆえ、当たり前のことではありますが、「売られているものしか買えないファッションを、自分の体型でどう着こなすのか」ということに、多くの人が悩んでいるのです。
冒頭で話題にした「ZOZO」による「体型採寸ボディスーツ」を活用したシステムは、この多くの人々の悩みをいくばくかでも、解消してくれるのではないか、とおもうのです。そして、ファッションと体型にかかわる固定観念や価値観までもを、前向きな方向で変えてくれる、起爆剤にもなりえるのではないかと、期待するのです。とても時間はかかるかもしれませんが。
この体型とファッションというテーマは、横須賀ジーンズ商会の、重要なテーマでもあります。この度の「ZOZOSUIT」の登場によって、このテーマがより話しやすく、そして、時事ネタであることを実感しています。まだまだこのはなしを掘り下げたいので、次回も引き続き、同じテーマで、横須賀ジーンズ商会らしくおはなしをしたいとおもっています。
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